三村珈琲店

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三村珈琲店にハズレはない

そして たまに
大アタリをひくことがある

陽が落ちて
冷やされた濃紺の空を横目に 車は走る

街灯の 極端に少ない山道
数少ない光源の周りで踊っているのは スズメ蛾だろうか
ヘッドライトには
こうべを垂れた稲穂と 彼岸花の赤が 交互に照らされては消える

少しだけ忙しかった 今日の終わりに
あの空間で 息がしたくなったのだ


窓の中に
オレンジ色の電球が見えて
ほっとする
店内へ足を踏み入れると
お客も 店主も 居ない

いちばん大きな机のまん中
一輪ざしの上で
深い赤色をしたコスモスが 背筋を伸ばしているのを見て
思った

今日は大アタリの日―

本棚の本を二冊選んたところで 店主が入ってくる
その瞬間から 三村珈琲店の時間は
ようやく私の息を数える気になったみたいに 動き出した
BGMは大好きなビル・エヴァンス
CDも持っているけれど
ここで聞くのと よそで聞くのとでは大違いだ

私が来てから何分も経たないうちに
私と同じように
夜を楽しみたいお客が
ひと組 またひと組とやってきた

一瞬の貸し切りが 最高の贅沢
けれど
一人占めは 少しソワソワしてしまうので
これくらいが ちょうどいい


注文したのは
栗のクグロフとグァテマラ

栗の渋川煮がゴロンっと入ったバターケーキは 秋の一番のお気に入り
いくつでも食べたい

夏のお気に入りは あの
羽より軽いバニラアイスの乗った珈琲ゼリーで
冬は
生チョコ 今年も出してくれるだろうか
春は…
何だったか
まあいいか 春になってから見つけよう

定番メニューも最高


する気がなかった仕事も
二つほど済ませて
閉店時間ギリギリに 店を出る

ぐぐーっときて香り高く 味がしっかりしている(らしい)
「ケニア」を豆のまま
それから
いちじくのジャム
を買ってかばんに入れて

来る時よりも
もう少しだけ 冷やされた空を見上げながら
しずかに車を出した

店主は いつもお客を見送ってくれる
サイドミラーに店主のシルエットを見て

また
すぐにでも来たくなった












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by michel-nano | 2014-09-28 12:29 | 三村珈琲店
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