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雨とミト

雨とミト_b0133939_23304516.jpg


ちょうど雨で
狭まっていく視界が
心地よくて

許容量を超えた
数種類の波を編みながら

走っている


ぎゅんぎゅんと
思考していた脳を
少し休ませたら

そうか
意図していなくても
整えられる瞬間の連続が今を作っているのかと

腑に落ちる


打楽器的に扱われるピアノを
肯定的に感じるのも
いつもは不快に思う
七色のLEDの下卑た看板が
魅力的に映るのも

私が今
数分前に居た次元を
超えているからなのか


なぜ
なぜ
を手放した先に
落ちている答えを

自由な気持ちで拾って

歌いながら

拾って






# by michel-nano | 2024-02-22 23:31 | 作品(絵)

大きな鳥だった時の記憶

大きな鳥だった時の記憶_b0133939_18402907.jpg
ある夜
わたしは
見えない翼を広げて
歩いていた

見えない翼は
目には見えないのだけれど
背中から体の真横に向かって
確かな質量を感じられて

ピンと広げると
全長6メートルになる


それは
大きな鳥の姿で


明確なイメージを持って
わたしは
その翼の位置を保ったまま
歩き続けた

これは


わたしの
いつかの姿なのだろうか

大きな鳥だった頃の私は

自由だったろうか

それとも

窮屈だったろうか

孤独だったろうか

満たされていただろうか

傷ついてはいなかっただろうか



そんな事を思いながら

車道の横をずっとずっと
歩いていた


車が通るたび
車道にはみ出した
わたしの翼が
煙のようにかき消されて
悲しかったから


方向を変えて
田んぼに挟まれた
真ん中の小道を行くことにすると


月明かりに
羽の一枚一枚が
きらきらと照らされているようで

気持ちが良くて
呼吸も楽にできて

今日の命を完遂したような気になった



またいつか
鳥になる夜がくるだろうか


あれから数日
夜に歩いても

あのイメージが
もたらされることはない










# by michel-nano | 2023-11-29 18:41 | 作品(絵)

ひとつの解答

ひとつの解答_b0133939_15485447.jpg
1年半ほどかけて
自分と対話しながら
一歩一歩ゆっくりと
進んできた


進むたびに
驚きと感動がついてまわって
結構
めまぐるしかったな


昨夜
いつものように
意識の静寂の端で
私自身に問いかけていたら

ひとつの解が
手の中にあらわれた


もし

貴方に会うことがあって
話をしたとして
じゃあ「だから?」と言われたとして

貴方に何かを求める事はないなと思った
応えてほしいわけではなくて
思い出してほしいわけでもなくて
笑ってほしいとも
泣いてほしいとも
困ってほしいとも
思わないなと




貴方を想っている

この事実が
当の貴方とは全く関係なく
私の人生においてのみ
ひとつの揺るがない現象で

他の誰にも
私ですら
制御できないという事実であり

恐らくこの
手に負えない感情は
最期まで持ち続けるであろう

そう断言できることが
ひとつの解答だと思った



いつか見た
ピンクトルマリンの色をした宝石が
私の胸にうずまっている夢

この夢のように
貴方への想いが
私を構成する
柱の一部になっているという事

なんのジャッジもなく
ただ
そうなんだと
気づいたとき


15年間のおさらいができ
現時点での学びが終えたのを
感じた



よくも
こんなにじっくり丁寧に
時間をかけて導き出したもんだなと


必要な過程を全て通った
完璧な運びで


ここが
タイミングなんだなと
納得した


もし生まれる前の私が
この事象を
緻密にプログラミングしていたとしたら

なんて奴だお前は


当時の私に言ってやりたい





しばらくは
この感情に浸っていようと思う

スッキリとして涼やかな
秋のはじめに似た

この感情に











# by michel-nano | 2023-09-21 00:00 | 作品(立体)

夢中

夢中_b0133939_12260207.jpg
ああ
まだ夢の中に居たいのか



自分の為のミルクティーを淹れながら
なんだか
どうも今日という日に
現実味がないというか

心ここに在らずというか


やっぱりさっきまで見ていた夢が
良すぎたんだな

そう思いながら
記憶をなぞっている


夢が劇的な変化を始めたのは
1年とちょっと前から

傷をえぐるような内容が
緩んで解けていくような過程を辿って
今日
ほぼ癒やされた気がした


心地よくて
もう少し夢の中に
意識を浸していたくて

ぼーっとする



ミルクティーは
いつも通りに淹れたにもかかわらず
味がぼやけて
よく分からない飲み物になっていた

五感まで
夢に引きづられて
不明瞭だ



次の夢は
どんなのだろうか
遅くても3ヶ月以内には
見るだろうから



また変化するだろうか
また
夢の中に居たいと
思わせてくれるだろうか




# by michel-nano | 2023-09-15 15:42 | 作品(立体)

人魚

人魚_b0133939_12265127.jpg
]

皮膚の内側5ミリほどの深さで
少し冷たいなと
そう感じる程度の水底で

眠っている

細やかな砂が
静かな水流で巻き上がり
頬をくすぐっているのを

気付くか気づかないかくらいの
浅い眠り


ふと
随分前に笑いあった人との
思い出に瞼が触れて
目を開けると

手に当たる
石のようなものに気づいた

すべすべとして
硬い感触

砂の少し下にそれはあって

咄嗟に掴んで掘り起こすと

胸像が姿を現した
誰かに似ている

なんだかとっても
大事なもののような気がして
恐る恐る
抱きしめた

抱きしめても
抱き返してくれることはなく


少し悲しくなって
それと同時に安心もして


その石像を
丁寧に埋め直した

さっきよりもう少しだけ
深いところに


そっと



そして
また睡魔がやってきて

砂の上で
ゆっくりと瞳を閉じた



人魚は
忘れる事にした

睡魔が今の出来事を全て泡に変えて
水面に持ち去ってくれるのを願って





小さな空気の玉が
規則的に
唇から放たれて登る


宝物をしまいこんで
少し
満足して

人魚は眠る







# by michel-nano | 2023-09-10 15:38 | 作品(立体)