漂白

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ある夜

体が透明になった
気がした

輪郭だけになって
ああなんて
心細いんだろうと

でも
その一瞬ののち

心のあり方なんて
どうでもよくなって

ただ

あの
蟹の兄弟みたいに

川底から
ぷくぷくと泡を吐いて
それが
太陽の光に透けてしまって
そして
はじけて消えるのを


見ていたいと

思った
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# by michel-nano | 2017-01-15 16:16 | 作品(立体) | Trackback

三村珈琲店

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とても眠かったけれど

午後から
三村珈琲店に
行くことにしていた

午前中
フラワーアレンジメントをして
それが
イマイチの出来で

まあ
こんな日もあるさと




妹が一緒だったので
何年かぶりに
二人で店を目指した


たまには
ひとりじゃなくて

誰かと行きたくなる


ついでに
彼岸花を撮りたかったので

カメラも持って

霧雨のしっとりとした
空気を切って
車は走る




土曜の午後は
結構
混んでいる

大きなソファを二人占めしたけれど
すぐにお客さんがやってきて
二人席へ移動した

人がいても
せせこましくない

ちゃんと
プライベートが保てる
計算された店内で

会話を邪魔しない
BGM



この店で
一人ではできないこと

それは
ケーキのシェア


チーズケーキと
バナナケーキと
スコーンも頼んでしまった

ちょっと多い
けれど

二人で
喋る
食べる

喋る
食べる

そして
カフェオレ(私)とチャイ(妹)を
ひとくち

また

喋る
食べる
喋る

をしていたら
ちゃんと
食べきれる不思議


あっという間に
夕暮れ時になってしまって

急いで会計を済ませる


実家までは 1時間
そして
私の家までは もう1時間



この日は

夕食の準備が

大幅に
大幅に

遅れた
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# by michel-nano | 2016-10-02 13:27 | 三村珈琲店 | Trackback

三村珈琲店

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日曜の午前中は

ねらい目

お客さんがきっと
少ないから


夏の日差しに
木々の濃い緑の葉が じりじりと焼かれる
吉井町の山々の そばの清流では
川遊びや バーベキューを楽しむ
家族連れが目立つ

ああ だからか
今日は車がいつもより断然多い



お店はがらんとしていた
やっぱりこの時間にして良かった


奥のテーブルについて
蝉時雨と馬追いの歌を聞きながら
くつろいでいると

「こんにちはー」
と子どもの声

「ほろ君 居らんのんよ」

このお店の
二人いるお子さんの
弟君だ

聞くと
店の主人であるお父さんと
彼のお兄ちゃんは
インドに自転車の旅 真っ只中とのこと

「そうなんじゃー  きり君はお母さんと留守番なんじゃなー」
と返すと
なぜか誕生日を教えてくれた

近々7歳になる彼が
生まれる前から
この店に通いつめてるんだよー
私は



奥さんと弟君の
ほのぼのとしたやりとりを聞きつつ
エチオピアモカとバナナケーキを
ゆったりと待つ

スケッチブックに鉛筆を走らせ
なんだかフニャフニャの線だな
とか思いながら

そいうえは最近 絵を描いてないな
と気づく



ひさびさに
本当にひさびさに

日々の生活から
一歩離れた心持ちで過ごした


来たい来たいと
冬から思っていたのにな
すっかり
夏も深まってしまったな


忙しない日常に
少し心折れて

ひっそりと
逃れてきた今日


変わらずここにある
この店に癒されながら


でも
たぶん
変わらないものはないと
確信する


ここだって
少しずつ変化しながら
進化しながら
この
懐かしさを
しっかりと保っている

保とうと努力している

珈琲の香りを
脳の奥で感じながら
同じ部分で
そう感じた


変わる

この季節も
もうすぐ終わる
すぐそこに
恋とおんなじ密度をした

秋が
やってくる



私も
変わる

季節と一緒に
きっと

誰も
気づかないうちに
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# by michel-nano | 2016-08-01 23:13 | 三村珈琲店 | Trackback

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まだ

会いたいと思っている

らしい


だって

夢に
出てくるんだもの
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# by michel-nano | 2016-07-24 12:18 | | Trackback

banana

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大雨と
雷の後に

カラッと晴れて

風がすごい


暑くはないけれど

冷たい冷たい
バナナスムージーを作って

窓という窓を開けて

密度の高い空気が
家の中を
かけぬけてゆくのを

ひたすら
頬で感じていた
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# by michel-nano | 2016-06-26 17:20 | 食べ物 | Trackback

「・・・・・・」

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あのねぇ

と言いかけて
口をつぐんだ

あれ



怒ってるんだよね

怒ってるんだったよね
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# by michel-nano | 2016-06-18 21:47 | | Trackback

何も知らない

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何も知らないような
顔をして

でも

本当は
いろんな悲しみや
苦しみにさらされたことがある


それを
全部飲み込んでから

笑っている



何も知らないような
顔をして
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# by michel-nano | 2016-05-25 00:08 | | Trackback

美醜

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言葉を持たない
ものに

「醜い」は

ない

そう思う


たとえば
この

枯れかけた花は
枯れ果てたのちも

美しい


それは
自分の姿を
着飾るつもりも
取り繕うつもりも

ないからだろう
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# by michel-nano | 2016-05-17 23:50 | | Trackback

いいもの

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いいもの
いいこと
いい瞬間

おそらく

9割
見逃して

1割で
奇跡を感じる
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# by michel-nano | 2016-05-15 10:55 | | Trackback

響く

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紫色の

ウサギの耳を
見つけたから

訊いててみた

私の声は
地中を通って

何百キロメートル先の
あの人に

届きますか
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# by michel-nano | 2016-05-08 17:19 | | Trackback

夢から花へ

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まどろみながら

まぶたの裏に
浅い夢を写す

ここが
空の上でないことに

何秒かして
気づく


外は
何歩か先に

さまざまな花で
あふれている場所があって

早く

目を覚まして
カメラを持って
でかけたくなる
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# by michel-nano | 2016-05-07 15:00 | Trackback

秘密

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のぞきこむと
特別な顔をして

「秘密だよ」

そう言って
私だけに
教えてくれた気がした

君がここで
咲く理由を
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# by michel-nano | 2016-05-03 00:36 | | Trackback

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日の光は
毎日
新しい

夜の間
一度死んで
そして

息を吹き返すから


真っ白な
光を
そのまま受けて


昨日の夜に
一緒に死んだ
花が

また
咲く
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# by michel-nano | 2016-05-01 21:29 | Trackback

変化

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この
春から


住む場所が変わり

仕事が変わり

一緒に暮らす人ができた


1ヶ月もたてば
変化には
慣れるものなんだな

そう思い


環境が大きく変わっても

好きなものは
変わらないんだな



PCの画面にならぶ
好きなものたちを見て

そう思う


ここは

ホトトギスや
フクロウの鳴き声は
聞こえない

静かな夜に響く

パトカーや救急車のサイレンには

もう少ししないと
慣れないな
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# by michel-nano | 2016-04-24 23:59 | 動物 | Trackback

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臍の上を

長い長い
流れ星が通ったあとみたいな
傷が

真横に走っている

いつか
ここから
確かに
血が流れたのだ

赤い血が


そう思って
おののきながら

指で薄くなぞって
耳を当てた

筋肉の擦れる音を
聞こうと思ったからだ


――――

もっと
ざわざわした音かと思ったら

小さく泡がはじけるような
海の底の音がして

不思議で


何度も

腹に耳を当てては









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# by michel-nano | 2016-02-16 23:14 | | Trackback

全知全能とは程遠いけれど

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「なんにもいらないや」


そう思って

そう思うのは
全部
この手の中に
あるからだと気づく


例えば
青信号を
左に曲がって
あおくて寒々しい空が
目に飛び込んで来た
昼下がりとか


粉雪の舞う中で
近くの山のどこからか
うぐいすの声が聞こえた
朝とか


貴方のことや
貴方との思い出を
この人には
絶対言えないなと思う
夜のはじめとか


それから

遠く 遠くで
月のように息をする
貴女の脈を
まぶたの裏に感じながら

細く歌う
夜の終わり頃とかに








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# by michel-nano | 2016-01-25 20:32 | | Trackback

ずっと

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重い重い
生クリームの
海の中で

身動きのとれないまま
自分の重力で
じわじわ沈んでいく

そんな思いを
していたような気がする


恐らく
8年ほど前のこと
むかし

もう
むかし


その頃より
だいぶ
自分を制御できるようになった
今でも

やっぱり
夢に出るんだ

あの頃のままの
姿で


どれだけ
私が
揺さぶられたか

それは
貴方にではなく
私自身に翻弄されて

私が
私に
潰されてしまっただけ
それだけなんだ


ホタルの森からはじまった

大きな木の鼓動
夜の道
野兎
昆虫の林
花火
夕焼け
紅葉
カメラ
知らない道路

わがまま

わがまま
わがまま



あんなに
くるしくて
愛しい時間は

これから先は
もうこない
絶対
こない


だから
少し

ほっとする









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# by michel-nano | 2016-01-19 08:00 | | Trackback

お砂糖思い出

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甘い甘い
粉砂糖のような

そんな
気持ちをふりかけておいて

その下の
苦い苦い心を
隠す

決して
美味しいお菓子のような
思い出では

なかった

なのに
ひと欠片も
手放せないのだ








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# by michel-nano | 2016-01-17 11:22 | | Trackback

2016年1月1日

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瞬時に0になり

すぐに1から
カウントがはじまる




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# by michel-nano | 2016-01-01 00:00 | 作品(立体) | Trackback

凍結していた思い出が次々とよみがえって

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身勝手に
とても
身勝手に

関わってきた

あの頃に比べれば

少しは
マシな人間に
なったのかも知れないけれど

やっていることと言えば

思い出を掘り返しては
舌の上で
瞼の上で
何度も反芻することで

何ら
変わっていない


本当に
身勝手な私が
数年前の私が

まだここに居る


眠りたくて
眠りたくて

夢の中には
必ず
会いに来てくれることが
分かっているから


こんなにも
揺さぶられる
自分が

恥ずかしい








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# by michel-nano | 2015-12-30 08:00 | 植物 | Trackback

勝手かもしれないけれど

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貴方に
会いたい

すごく
会いたい

会って

数年前の
至らなさや
最低な私のこと

どうしてるかってことを

伝えたい



たまたま
貴方の話が出た
それだけで
その夜
夢に
貴方が出てきた―



数年前

私に
辛抱強く
つきあってくれていたこと

数年前

貴方が目の前に居るだけで
胸がいっぱいだったこと

貴方が
どんなに
素晴らしい人間かということを

伝えたい


そんなこと
私に言われなくたって
知ってる

私のことなんか
もう忘れたって


そう言うかも
知れないけれど









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# by michel-nano | 2015-12-29 08:00 | 植物 | Trackback

三村珈琲店

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スケジュールが空いたので

平日の三村珈琲店を
ひとり 訪れた

雨上がりの木々は
葉っぱを
ぜんぶ洗い流されて
裸んぼうになっている

しっとりと息をしながら
毛細血管のように
空に伸びる枝を見ながら

私も
冬の湿り気を
吸い込んだ


月曜日の昼下がりは
意外
お客さんが二組ほど居て
今日は 小学校がお休みなのか
二人のお子さんもくつろいでいた

少し賑やかな店内

私は
奥の二人席に腰かけて
本を選んで

注文した
ニルギリとスコーンを
ゆったりと待った

店に 二台ある
薪ストーブの小さい方も
赤く燃えていて

じんわりと
暖かい空気を運んでくれる

今日は
十二月にしては気温が高いから
ひざ掛けは いらないかな


運ばれてきた
ニルギリとスコーン

本のページをめくるたび
小麦粉の香ばしい匂いと
苺ジャムと生クリームの甘い香りが
鼻先をくすぐる

乳白色の器から立ちのぼる
ニルギリのすっきりとした湯気を
向かいの黒いソファーに透かしてから
ひとくち

それから

スプーンで苺をすくって
生クリームをもったりとのせたスコーンに
落としていただく


ああ

ブルーマンデーを
忙しなく過ごす
世界中のみなさま

ごめんなさい


私は今
至上の隠れ家で

こんな幸せを

ほおばっています






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# by michel-nano | 2015-12-21 20:10 | 三村珈琲店 | Trackback

羽を広げて

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暖かい風に

脈が透けて
鼓動が速くなって


でも
春じゃない


太陽が傾けば
途端に

氷のようなため息が
足元から
のぼってきて

茎や
はなびらを
硬直させる


それでも

咲いてしまったから


明日には
また

光に向かって
羽を広げるしか

道は

ないんだ







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# by michel-nano | 2015-12-21 13:10 | | Trackback

曲線

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伝わっているだろうか

伝わればいいのに


この
皮膚を通して

私の
この幸せが

指先から
唇から
まぶたから


伝わればいいのに


この年になって
この年になったから

花火のような刺激とは
違う

温かい
土の中のような
幸せを

手にした



伝わってるよ
そうは言うけれど


本当に

伝わっているだろうか








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# by michel-nano | 2015-12-21 08:18 | 植物 | Trackback

冬の嘘

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小春日和


陽気にだまされて

庭のいくつかの花が
咲いていた

秋の枯れ葉の
香ばしい匂いと

春の初めの
若草の香りが混ざって


庭は
なんだか変な感じ



私も
だまされてみようかな


カメラを構えながら
思う









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# by michel-nano | 2015-12-19 22:19 | | Trackback

明るい雨

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初冬

まだ
あたたかい夜が
続いていた

夜明け前から
雨の音がしていて

まぶたの上に
雫が落ちて
はねる夢を見ながら


たくさんの息をはいて

少しずつ空気を吸って



雨に濡れる

植物の
まねみたいなことを









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# by michel-nano | 2015-12-03 05:00 | 植物 | Trackback

椿

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少し
ぼーっとしたくて

庭に出た

もう
そろそろ
花どきを終えて

静かに
枯れてゆく庭の中で

いくつか
これから
咲こうとしているものが―



陽の光はあたたかく
陰ると
急に寒い

歩きながら
空が
明るくなったり
暗くなったりを
くりかえすのを

明度と温度が
ゆらゆらと変化するのを
楽しんで

玄関の傍に立つ
椿の前に
たどり着いた


葉が「ふ入り」で気に入っている
その木の下には
うすいピンクの花が
ふたつ みっつ落ちていて

首から落ちていて

でも
生き生きとしていて

美しい


枝の下で
ひとつだけ
うつむいて
地面を見つめる花を

短く切って
家に持って入った

家の中では
光の方に
顔を向けてやった


私の
その
偽善や欺瞞を

この花は

笑っているだろうか

それとも
おののいているだろうか







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# by michel-nano | 2015-11-29 15:42 | | Trackback

泣き空

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雨が降り出したね

ふと
あの人は言って

窓を
少しだけ開けた

息を殺して泣くように
夜の雨は
静かに静かに
落ちていた


なんだか
私達と
そのほかを
隔てるカーテンみたいて

この雨は
好きなんだ


そう
私は言って


しばらく
二人で

外の街灯に
一瞬うつって消える
いくつもの銀色の糸を

眺めていた









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# by michel-nano | 2015-11-24 20:21 | 風景 | Trackback

三村珈琲店

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休日

早朝のジョギング後に 二度寝
次に起きたら 大寝坊
でも 仕事をしようと支度をはじめる

その日は 職場から向かおうと思ったから


日が短くなった

街灯の少ない 薄暗い道を走る

さみしくて さみしくて
そのさみしさが とても心地よくて

死んでしまった人のこととか
出会った人のこととかを
思い出していたら 
店に着いた


その日は先客がいた

私と同じく おひとり様が多め
後から二組ほど来て
少し にぎやかな店内
こんなかんじは久しぶりな気がした

店主と会話を楽しむ人には カウンター
じっくり本を読む人には 奥の備え付けのテーブル
友人とお喋りするなら 中央のテーブル

それぞれが それぞれの楽しみ方をしている

私はピアノ近くの二人掛けに腰かけて
そろそろ出ているかと狙っていた
栗のクグロフを注文
それからイエメンモカを頼んで
BGMのJAZZに耳を傾けた

本棚にある 大量の本の中から
「薬草全科」を手に取り
それを片手に
遠くにいる 一番大事な友達にメールを送った

「いま三村珈琲店にいます」




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# by michel-nano | 2015-10-13 08:00 | 三村珈琲店 | Trackback

自然光

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雲を通って
すりガラスを縫って

やわらかな
絹のような光沢を

私の網膜に
届けてくれる

改めて
日の光の魔法に
驚いた







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# by michel-nano | 2015-09-30 08:00 | 作品(立体) | Trackback